あなたに映る花
――パァン……!
小気味よい音が室内に響いた。
あたしの目の前には、景くんの細い背中。
景くんが、良太を叩いたのだ。
「――いい加減にしなさい!」
景くんの声が響く。
良太は叩かれた頬を押さえ、唖然としていた。
「先輩方の必死の声を聞かず、挙げ句の果てには仲間を罵倒するなんて!何考えてるんですか!」
その痛烈な言葉に、良太がカッとなった。
「てめぇに言われる筋合いはねえ!」
だけど景くんは怯まなかった。
「筋合いはありませんが、言わせていただきます!貴方は私を甘いとおっしゃいましたが、貴方は大甘です!自分達のいる場を荒らす新参者を嫌い、少しでも弱音を吐けば気に入らないと言って排除しようとする。貴方のしていることは、玩具が気に入らない幼稚園児と一緒です!」
「なっ……!」
良太はあんぐりと口を開いた。
だけど景くんの勢いは止まらない。
「私のことをいくら殴ろうと構いません。でも、それでいいんですか?」
景くんは眉を潜めた。
「もし私でなければ…貴方は人に取り返しのつかない怪我を追わせていました。それほどの力でしたから」
…そんな…
「…何出まかせを…」
「彼女の言う通りだよ、良太。彼女が上手く避けていなければ、君は彼女の顔を変えていた」