あなたに映る花
「え……?」
あたしは景くんを見る。
加減したって……あんなに血だらけなのに?
「ど、どういうことだよ拓真」
良太が困惑した声を上げた。
拓真は静かに答える。
「…景は、お前の拳が当たると同時に、自ら後ろに跳んだ。衝撃を受け流したんだ。止まっているものに動いているものがぶつかればすごい衝撃だけど、ほぼ同じスピードのものにぶつかっても衝撃は少ない。景は、お前の拳と同じスピードで後ろに下がった。だから拳はぶつかるし血も出るけど、鼻が折れたり頬骨が陥没するような事態には至らなかった。…そうだろ?景」
拓真が景くんを見る。景くんはコクンと頷いた。
それを見た良太が肩を震わせる。
「…なんだよ、それ…俺をナメてんのか!?」
良太の目に、再び怒りが灯る。
「そんなのが嬉しいと思うかよ!むしろ素直に拳受けてくれた方が良かったぜ!」