あなたに映る花
「ようし!今日はこれにて終了!キャストは後日決めます!どっちにしろ殺陣できる人は必要だから、剣道部には私と美香でいってくるわ」
そうマナ先輩が宣言すると、景くんは帰り支度を始めた。
あたしは、その背中に声をかける。
「景くん」
振り向いた景くんの顔には、まだ痛々しい切り傷が残っていた。
「傷、大丈夫?残ったりしない?」
「大丈夫ですよ。すぐ治ります」
「そっか。……ありがとう」
「え?」
景くんは首を傾げた。
「良太の事、止めてくれてありがとう。先輩達を守ってくれて、ありがとう」
すると景くんはニコッとして答えてくれた。
「いえ。あれくらいなんでもないです。…では、お先に失礼します」
そう言うと、景くんは部室を出ていった。
「…不思議なやつだな」
振り向くと、良太がいた。
良太は頭を掻きながら気の抜けた笑いをこぼす。
「俺、さっきまであいつのこと大っ嫌いだったのに、今はもう信頼してる」
「……そうだね」
あたしが答えると、良太は何故か泣きそうな顔になる。訝しく思って質問しようとすると―――