あなたに映る花

そして、おもむろにあたしの手を取ると――

「大変美しい。よもや花も恥じらう可憐な少女に出会うことができるとは」

――ちゅっ、とリップ音を立てて手の甲にキスをした。

「なっ……!」

熱が右手と顔に上るのがわかった。

ななななな…!

ボーゼンとするあたしを見た良太が悔しそうに喚く。

「拓真!お前何してんだよ!」

ホントよ!

「お前だけずりーぞ!」

……意味がわからない。

「俺にもやらせろ!」
「何言ってんだあんたは!」
「駄目に決まってるだろ。佑の右手は既に俺のものだ」
「あんたはいつからそんなにキザになったのよ!!!」
「み、皆さん落ち着いて!」

そんな感じで騒いでいると――。

「出てこい下級生ズ!」

部室の方から、マナ先輩の声が聞こえた。

「どうしましたかー?」

拓真が声をかけると、よくぞと言わんばかりの声が返ってきた。

「ついに見つけたの!青年役!」

え――

あたし達が顔を見合わせると、男の人の声が聞こえた。


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