あなたに映る花
良太はさっきからドアの前を行ったり来たりしている。
一方で拓真は俯いたままピクリとも動かない。
あたしは、ずっと考えていたことを口にした。
「弓鶴って人……ほんとに『青年』なのかな…」
虚空に向かって呟いたけど、拓真はちゃんと聞き取ってくれた。
「多分、本当だよ。名前も一緒だし、なにより景が間違えるはずがない」
「でも、記憶ないって言ってたし…」
「普通前世の記憶なんかないよ」
……確かに、その通りだ。
普通の人は前世の記憶なんか持ってないよね。
あたしも持ってないし。
じゃあ…
「なんで、記憶が残ってるんだろう……」
拓真に聞くと、冷めた声が返ってきた。
「俺が知ってるわけないでしょ」
「そ、そうだよね…」
拓真の不機嫌オーラに気圧されつつあたしは頷いた。
突然良太が動くのを止める。
「…俺、思ったんだけど」
「??」
唐突な台詞にあたしが首を傾げると、良太がじれったそうに軽く足踏みをした。