あなたに映る花
「佑先輩は、君仁…本当の田沢先輩を見て、どう思いましたか?」
「え?」
どう、って……
…………
「……あたしの印象とは、少し違ってたかも」
景くんをちらっと見ると、彼は相変わらずふわふわと笑っていた。
その笑顔に促され、言葉を続ける。
「その…あたし、あの台本読んだとき思ったの。君仁って奴は、なんで景姫の幸せを奪おうとするのか、って。その為に青年を殺そうとするなんて酷い野郎だなって、思ってた」
でも…
「…今は、少し違うかな。なんていうか、そこまで非情じゃないっていうか……景くんに、『斎藤弓鶴に近づくな』とは言ってたけど……その、どれも景くんを案じてるみたいで……」
しどろもどろに答えると、景くんは頷いてくれた。
「君仁は……本来、妖怪と呼ばれる者達の特徴と、小説などで人の味方をする妖怪の特徴、そのどちらをも持ち合わせているんです」
そう話す景くんの顔は、とっても穏やか。
「……人間みたい、ってこと?」
あたしが聞き返すと、ゆっくり首を横に振る。
「いいえ。彼は…そうですね。最も妖怪らしいんです」