あなたに映る花
どこか慈しみを含んだ目つきは、穏やかに空を見つめる。
「君仁は、大妖怪の息子、いずれ百鬼の上に立つ者としての誇りを持っています。また人は低俗で脆い生き物だという考え方をします」
……それのどこが人間の味方なんだろう。
訝しがるあたしを可笑しそうに見ながら、景くんは続ける。
「ですが、認めるべき相手は潔く認めます。そして真っ向勝負を挑み、相手の本質を見極める――認めた相手が理不尽なことになれば、その敵を独自の考え方から倒します」
………?
よ、よくわかんないけど…
「…つまり、田沢はいい人、ってこと?」
思ったままに呟くと、景くんは思いにふけるような顔をした。
「……あの人は、愚かです」
「え?」
何のことかわからなくて聞き返すけど、景くんは何も言わない。
仕方ないから他の話題を振ろうとしたとき、景くんがまるで秘密を話すみたいな囁き声で喋った。
「…君仁は、私に手を出しませんでした」
……え……
手を出す、って…