あなたに映る花
声が耳に心地好くて、彼の瞳が綺麗で、私は動けない。
「――とびきりの美人、って意味だよ」
「私が…ですか…?」
「他に誰がいんだ」
目を逸らすことも出来ず、私は再び顔が熱くなる。
「これくらいで赤くなるなんて、お前はガキか」
……笑われてしまった。 むっと頬を膨らませると、美しい人はポンと私の頭に手を乗せた。 「こ…子供扱い、しないで下さいっ!」 「何言ってんだ。お前なんかまだまだガキだ」 「もう十六です!」 「そうか、俺は二十だ」 俺の方が年上だな、と勝ち誇ったように言う彼を、私は睨みつける。 けど、そんなの気にもとめずにあけすけと質問してくる。 「名前、教えろよ」
「……教えません」
拗ねてそう呟くと、美しい人はハア、とため息をついた。 「そういう所がガキだっつってんだよ。いいから教えろ。桜の精、じゃ呼びにくいだろうが」 「…景、です。大切な物を照らせる太陽であれと、亡き母が付けました」
渋々教えると、彼は顎に手をあてて私を見る。 「…いい名じゃねえか」