あなたに映る花
「あ、貴方は?なんとおっしゃるんです」
誉められた嬉しさを隠したくて、私は美しい人に問い返した。
「俺か?…知りたいか」
…悪戯っぽく笑いながら茶化す彼を見ていると、なんだか自分が情けなくなってくる。 「…教えて、くださいませんか…?」
まなじりを下げて引き下がる。 視界が潤んできた。
そのまま美しい人を覗き見ると…―彼は何故か顔を赤らめている。
「…どうかなさいましたか?」
私が聞くと、彼は苦笑して私の頬に手を添えた。
「…男を落とすことも知らねえでそんだけなら、逆に恐ろしいよ」
「……?」
わけがわからなくて眉を寄せると、彼はわからなくていいんだよ、とまた笑う。
言い返したかったけど、また子供って言われるのは嫌だったから黙っていた。
すると彼が口の端を吊り上げる。
「……斎藤弓鶴」
「え?」
「名前だよ。斎藤弓鶴だ。弓は弓のようにしなやかに折れることのないよう、鶴は…大切な物の傍に長くいられるように、って意味だ」
「斎藤、さま……」
鼻と鼻がくっつきそうな位近くにある顔は、楽しげに笑う。