嘘と紅茶とバウムクーヘン 【短編】


……何だ。



騙されたとか言っておきながらも、わたしは喜んでいたのか。

彰哉が他の女のモノにならなくて、安心しているのか。


結局のところ、わたしの思考回路は純粋な乙女だったわけだ。



「嘘吐いたのは悪かった。でも藍依、俺のこと好きだろ?」



にやりと得意げな笑みを浮かべるその顔に、拳を一発お見舞いしてやりたくなった。


何を、何をお前はふざけたことを…!


どうしてそんなに自信満々且つ自意識過剰なんだ!

こうなったら事実だけど頑なに認めないぞ!



『だ、誰がだ!お前のことなんか、好きなわけ……っ!』




ちゅっ。




彰哉の顔が近付いて来たと思ったら、一瞬で離れた。


濡れた唇に残っているのは、じゅくりと蕩けてしまいそうにたぎる熱。






「2回目、もーらいっ」
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