嘘と紅茶とバウムクーヘン 【短編】
振り向くことなく淡々と告げられ、わたしは一人でますます顔を赤くするばかりだった。
くっ…何て一方的な辱しめを受けているんだ…!
…このまま赤くなり続けたら、わたしはいつか苺やトマトにでもなってしまうんじゃないか。
そんな阿呆らしい危惧さえしてしまう程、顔だけでなく全身が熱に冒されていた。
『っす、好きだと言った覚えはないぞ!!』
ぴたりと止まる足。
彰哉は首だけを軽く捻り、黒曜石のような瞳でわたしをじっと見据えた。
有無を言わせない威圧感に負け、思わずたじろぐ。
『っ、な、なんだ!?言いたいことがあるなら、はっきりと言え!!!』
羞恥心を振り切るように、声を張り上げた。
学校から疎らに出てきた生徒の群れが、何事だと言うようにわたしたちをちらちらと見ている。
しかし、そんなことを気にする余裕もなかった。
「言って良いんだ?」
……何故、確認を取る。