嘘と紅茶とバウムクーヘン 【短編】
不審に思いながらも、続きを聞きたかったため頷いた。
彰哉は眼鏡を外すと、レンズ越しではなくわたしを真っ直ぐに捕えた。
どくり、と。
心臓が奇妙な音を立てた気がする。
「俺は藍依が好きだ。付き合って欲しい」
『っ!?』
だ、誰がそんなことを言えと言ったんだ!
莫迦か!
莫迦なんだろ!
確かに言いたいことを言えと言ったのはわたしだが、だからってな…!
痛む頭を押さえ、わたしは深く溜息を吐いた。
…こうなったら、もう自棄というやつだ。
「…藍依?」
訝しむような声を聞き流しつつ、今度はわたしから真っ直ぐ彰哉を見返した。
ばちっ。
視線がかち合う。
一気に顔に熱が集まったが、歯を食いしばってそれに耐えた。
『っ……わたしもお前が好きだ!しょ、しょうがないから付き合ってやる!!』