嘘と紅茶とバウムクーヘン 【短編】
あまりにも冷たい一言に、何故か眼球の奥の方がじんわりと熱くなった。
初めて感じたその熱に、わたしは若干戸惑う。
なんだろう、眼を取り出してその向こう側を確認したいくらい熱い。
終いには視界がぐにゃりと歪みぼやけ始めた。
これは一体、どういうことだろう。
わたしの瞳はついに壊れたのか?
そんな下らない自問自答さえ、思わずしたくなる。
次いで、頬を生温い何かが伝い落ちるのを感じた。
おもむろに手を遣ると、濡れていた。
ああ、意味が解らない。
『……仲良く、やれ、よっ…』
気付かないうちに、今度は声が震えていた。
原因はあくまでも不明だったが、遂に喉までやられたらしい。
わたしは脆弱な自分を密かに嘲笑した。