嘘と紅茶とバウムクーヘン 【短編】
何て重症なんだ、一息に喋ることすらできない。
ひくっ。
声帯なのか喉なのかはよく知らないが、大袈裟に痙攣したのを感じた。
しゃくりあげるように、何度もひくっひくっと声が漏れる。
押し殺そうと思っても叶わず、自分の意思とは無関係にそれは続いた。
彰哉は何故か瞠目して、わたしを見ていた。
…そ、そんなにも驚くことなのか。
無表情な彰哉があんなにも驚いているのだから、やはり端から見ても十分異常らしい。
わたしもそうではないかと思っていたところだ。
今までこんなことはなかったんだから何かの病に違いない、すぐに病院へ行った方が良いんだろうか。
生まれてこの方、一度たりとも味わったことのない感覚だ。
「……藍依が泣いてるところ、初めて見た」