嘘と紅茶とバウムクーヘン 【短編】
全身の筋肉が硬直した気がした。
『~~~っ!?』
何だ、何をされたんだ。
……唇が……顔が、どうしようもなく熱い。
腕をだらりと下ろしたまま、わたしは放心状態になっていた。
暫し経つと、彰哉の顔がゆっくりと離れた。
どういうわけか唐突に彰哉のことを直視できなくなり、慌ててコンクリートの地面をじっと見詰めた。
…そうだ、そういえばここは校門の前だった。
『…なっ何を、したっ…!』
視線は下に向けたまま声を絞り出して、彰哉の胸をどんっと叩いた。
強めにやったつもりだったのに、彰哉の身体はよろめくどころかびくりともしなかった。
…こいつ、こんなに背が高かったか?
「何って、キス」
彰哉は抑揚の一つすらなく、さらりと言ってのけた。
な、何だと…!?
お、お前は何をっ、ぬ、ぬけぬけと…!
……き、キス、……俗に言うあれか。
せ、接吻を……した、のか。
…だ、大体な!!
おおおお前は何故そんなに平然としていられるんだ…!