嘘と紅茶とバウムクーヘン 【短編】
『…………はぁ?』
何が、誰が、何を、誰を、好きだって?
意味が解らず顔を顰めると、彰哉は小さく溜息を吐いた。
「なに、聞こえなかった?藍依が好」
『ち、違うっ!そ、そういう意味じゃない!お前はっ……何を、言ってるんだ…!』
山本優梨だとかいう彼女ができたんだと、先程わたしに言ったばかりじゃないか。
何を思って、そんな軽々しく好きだとか言うんだ。
遊びなのか?
それともからかっているのか?
彰哉の考えていることが解らず、わたしは眉根を寄せて口を噤んだ。
黙りこくるわたしを見てどう思ったのか、彰哉は暫し思慮に耽った後おもむろに口を開いた。