完璧男子
「○○駅― ○○駅―」

「降りるぞ」



 手を引っ張られて人込みの中に溶け込む。



 ぎゅうぎゅうしていて進みにくい場所のはずなのに、背の高い蓮がいるだけでドンドンと進める。


「そここけるから気をつけろ」

「ん? ひゃぁっ!!!」



 言われてすぐに躓く私。



「…うわっ」



 思いっきり蓮の背中に飛び込んだ。



 蓮は少しよろめいて180度回転して私をちゃんと受け止める。



「言ったんだけど?」

「はぃ……」

「やればなんでも出来るのに…なんでこうなんのか…わっかんねぇな…」

「ごめんなさい…」



 シュンと蓮の胸から離れて下を向く。



「いや…怒ってねぇから」

「うん…」



 もう一度蓮に引き寄せられて泣きそうなわたしの背中をなでる。



「止めとく?」

「いっ、イヤッ!! 行くの」

「なら、大丈夫?」

「うんっ!!」




 また、蓮の手を取って2人で歩きだす。





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