完璧男子
「出たらクレープ買ってあげるからもうちょい我慢な」

「うんっ…」


 …さっきから後ろでヒタヒタ足音が聞こえる。


「蓮っ…後ろぉ…」

「あ? ホントだ(笑)」


 蓮は後ろを確認してから笑って答える。


「女がいる」

「女の人…?」

「髪の長いひょろひょろの女」



 ひぃ…っ…。


「怖い…」



 恐る恐る後ろを振り向くと…ドアップ。



「きゃああああっ!!!!」

「おわっ!!!」


 思いっきり蓮に飛びついて胸に顔をうずめる。


「すいません。優枝? 大丈夫か?」


 女の人に頭を下げたであろう蓮は私の耳元でささやく。


「仕事なんで……気にしないで…ください…」


 ぼそぼそと話す女の人。


「蓮…幽霊さんとしゃべってるの…?」

「…優枝さぁ…もしかして本物と思ってる?」

「…違うの?」

「ちげぇし…役だよ」


「…本物じゃないですよ…」


 …違うの?


< 316 / 506 >

この作品をシェア

pagetop