Lasting
第4話 歯車
翌朝―――


「おはよーっ」

シンは後ろから声を掛けられるも、反応を示さない。

「おはようございます、伊勢先輩。橘先輩も」

シンと共に登校するヒカリが、丁寧に挨拶を返した。

「ミツキでいーよ、ヒカリちゃん。あ、こいつはハルねっ」

笑顔の伊勢珠月(イセミツキ)は人差し指で、ハル――こと橘晴彦(タチバナハルヒコ)をさした。

その時、シンの肩へハルが手を掛けた。

「ヒカリちゃんは答えてくれるのに、お兄ちゃんはシカトー??」

挑発的に顔を覗きこまれ、嫌気がさしたシンはハルの腕を払う。

「馴れ馴れしくするな」

足早に歩き、距離をとった。

シンの背中を、三人は立ち止まり見つめる。

悲しげな瞳のヒカリが、はっとしてミツキとハルに向いた。

「ごめんなさい。お兄ちゃん、人と接するの苦手で…」

深く頭を下げるヒカリに、二人は穏やかに微笑む。

「アタシらは、全然平気だよっ」

「お兄ちゃんの性格は、よーくわかってるし。気長にやるさ」

脳天気な口調で、ミツキとハルは言ってみせた。

ヒカリが、その言葉に安堵したように笑う。

「ありがとうございます。これからもお兄ちゃんのこと、よろしくお願いします」

再び礼をすると、先へ行くシンの方に走った。

「ホント、素直だねぇ。あのコは、さ」

いささか拍子抜けしたミツキは、指で頬をかく。
ハルが、思わず吹き出していた。

「お兄ちゃんも、素はあんな感じなんじゃねぇ??今は警戒してるだけで」

そう言って歩き始めるハルを追い、ミツキが怪訝な顔つきに変わる。

「そっかぁ??他人を信用したりしなさそうじゃん」

首をひねりつつ、反論した。

ハルは、ひらひらと片手を振る。


「人は見かけによらないもんだぜ??…それに、俺たちが従うべき人間には変わりない。そうだろ??」

真剣な眼差しのハルに、ミツキがゆっくりと頷いた。


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