初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
「では、撮影いたしますね」

 茜さんの声が聞こえると、身長差を気にしてか、シンさんが少し膝を屈めてあたしと顔を近くする。

「ご主人様、ピースですよ」

 片腕を外して顔の近くでにっこりとピースをしながらそう言うと、シンさんもそれを見ておずおずとピースを作ってくれた。

「こ、こう?」

「はい。にっこり笑ってくださいね」

「あ――う、うんっ……」

 そして、ポラを構えた茜さんがファインダーを覗き込む。

「――」

 あたしは、ごくわずかにそっと腕に力を込める。

 こんなにもシンさんと密着できるなんて、初めてだったから。

 ぎゅっと体を寄せると、すぐ隣のシンさんからふわりとフレグランスが漂ってくる。

 嫌味がなく、さり気ない甘さと、爽やかで――まるでシンさんみたい。

 どこのメーカーのコロンなのかな?

 もっとこの香りを知りたい、かも――……

「はい、チーズ。――お疲れ様でした、ご主人様」

 心の中でそんなことを思いながらも、シンさんと密着したほんのわずかなひと時は、あっという間に終わってしまった。
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