初恋は前途多難！ ～朗らか社会人とメイド女子高生 【１：出会い編】

「だ、ダメよ、タクミ。ちゃんとバイトに行かなきゃ」

　焦る心を必死に抑え、あたしは何とかして言い訳を探していた。

「病院は大丈夫。もう慣れちゃったし、気にもしてないよ。それに、明日はお店の子とお昼から出かけようって約束してたの」

　気遣ってくれてるタクミに嘘を言うのは気が引けるけど……

　でも、正直にシンさんと会うなんて言ったら――

　今度こそ、お店を巻き込んだ問題になっちゃうかもしれない。

　どうしてもそれはしたくなかったし、シンさんに対して良い印象を持っていないのはさっきの言葉でもはっきり分かったから、タクミには隠さなきゃいけない、って――このときは思った。

「気遣ってくれてありがとうね、タクミ。嬉しかったよ」

　にこり、と、なんとか笑ってお礼を言えば、

「――そっか。先約があるんなら仕方ないよな」

　タクミはちょっと残念そうに呟く。

「ごめんね……でも、３人で遊びには行きたいから、今度絶対行こうね！」

「ん。そうだな」

　あたしがそう言うと、ふっと笑顔を作って頷いてくれたタクミ。

「――……」

　よかった――

　心の中で、あたしはふ……と大きなため息を１つ、吐き出す。