初恋は前途多難！ ～朗らか社会人とメイド女子高生 【１：出会い編】

「――なぁ」

　駅が近づくと、ぽそり、とタクミが口を開く。

「どうしたの？」

　それに応えるように顔を上げると、

「……いや、いい」

　口をつぐんでタクミはそっぽを向いた。

「変なのー」

　冗談めかしてタクミの脇を小突く。

「別になんでもないさ」

　お返しとばかりにタクミはあたしの頬を突付いてくる。

「ちょっと肉付きがよくなったんじゃないか？　ぷにぷにしてきたぞ」

「ちょっ――タクミっ！」

　タクミの言葉に顔を真っ赤にさせ、あたしは恨みを込めて思いっきりタクミの背中を叩こうとしたけど、

「へへっ――いいことだろ？　お前、ちょっと痩せすぎてたんだからさ」

　それを上手くかわしたタクミは、悪びれる様子もなく笑ってまたあたしの頬を突付く。

「タクミのバカっ！　デリカシーゼロっ！」

　せめてものお返しに、と、あたしは精一杯タクミを睨み、そう叫んでやった。