初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
「じゃあ、ここで別れるね。タクミ」

 駅に着くと、あたしは待ち合わせの場所に向かうから、と言って、中央口でタクミと別れる。

 そんなことはないと思うけど、西口まで一緒に来られても困るかもしれない。

 やって来たシンさんと鉢合わせ――なんて可能性がないとも言い切れないし。

「――じゃあな。友達と楽しんでこいよ」

 ほんの少し複雑そうな表情を浮かべながらも、タクミはそう言って手を振り、バイト先のお店がある方向へと消えて行く。

 タクミの姿が見えなくなったのを確認してから、あたしは待ち合わせ場所のお店へと向かう。

 シンさんと待ち合わせているお店は、駅の西口。

 コンコース内を通って西口に出ると、構内にあるシューティングスターコーヒーの入口をくぐる。

 トレイを持ち、入口の近くに置いてあるパンのコーナーへ。

「うーん、美味しそう……」

 ハムサンド、クリームチーズパン、ベーコンサンドにブルーベリーベーグル。

 目移りしそうな魅惑的なパンを前に、どれにしようかしばらくうっとりと悩む。

 お金のこともあるから――パンは1つだけ。

 たくさん迷った挙句に選んだのは、チョコクロワッサンだった。
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