初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
 ぺたん。

 シンさんの手が、おもむろに運転席のドアの窓ガラスに張り付く。

「あははっ、手形がついたね」

 窓にはくっきりとシンさんの大きな手の形が白く残った。

「っ!」

 それを見てあたしは呆気に取られる。

 あまりにもいきなりすぎた行動に、思考がついていけなかったから。

「……別に綺麗に乗ってるつもりはないんだ。色々と忙しくって、滅多にこの車に乗っていなくてね。だから必然的に綺麗なままっていうか――そういうこと」

 窓から視線をあたしに戻してくれたシンさんは、またにっこりと笑ってくれると、

「だから気にしなくてもいいよ。使っていけば自然と汚れなんて出来てくるものだし、そういうのを気にしないタイプなんだ。――それよりも、さくらちゃんがリラックスしてこの車を楽しんでくれる方が、ぼくとしてはすごく嬉しいんだけどな」

 そっとあたしの頭を優しく撫でてくれた。

「っ――」

 一瞬、自分が何をされているのか分からなかったけれど。

 頭に乗っているのがシンさんの手だと分かったら――瞬間湯沸かし器のように顔が真っ赤になった。

「あっ、ごっ――ごめんっ!」

 それに気付いたシンさんも、ぱっと手を離す。

「どうしたら緊張を解いてあげられるんだろうって思ったら、つい無意識で……ごめんね、馴れ馴れしくしちゃって」

「い、いいえ――大丈夫です」

 鼓動が早くて大きい。

 ――けれど。

「その……緊張がなくなりましたから。――ありがとうございます」

「そ、そう? ――そっか、よかった」

 確かに緊張は消えたし、それに……心がなんだかすごく甘くなったような気がする。

 甘いどきどきを抱えながら――あたしは、リラックスしてふかふかのシートに再び身を預けることが出来た。
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