初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
「……」

 どきどきどき、と早鐘が続く。

 あたしが、初めて――

 その言葉に、なんだかすごく特別な意味が含まれているようで。

 頭がオーバーヒートしてしまいそうだった。

「ぼくが『乗せたい』って思った人に乗って欲しかったんだ。――それがきみだよ」

 そ――と。

 シンさんの片手がハンドルから離れる。

「……」

 その手をただ眺めているあたし。

 ゆっくりとこっちにやってくる。

「――……」

 頬に触れかけたそのとき、シンさんの手はハンドルに戻っていった。

「青になっちゃった」

 ため息混じりの笑顔でそう呟くと、シンさんは再び前を向き、アクセルを踏む。

 あたしも前を見ると、信号は確かに青に変わっている。

 けれど、あたしの胸の鼓動は高鳴ったまま――しばらく、戻りそうになかった。
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