初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
「あの――シンさんって……」

 まだまだ移動する車内。

 沈黙しているのも悪い気がして、あたしは話題を探しながら口を開く。

「うん?」

 穏やかな車内に、シンさんの柔らかい声が響く。

「あ……いえ、その……ごめんなさい」

 思いついたことは思いついたけれど、それはひどくプライベートなこと。

 お店のルールを思い出し、寸でのところで言葉を飲み込んだ。

「……大丈夫だよ」

 俯きかけると、シンさんのそんな言葉が聞こえた。

「え……?」

「ぼくがお店のルールを一杯破らせちゃってるから、また破っても一緒だよ」

 思わずシンさんを見上げると、そこには温かくて優しい微笑み。

「……」

「あ、違った? ごめん――謝ってくれたから、てっきりお店のルールのことを気にしてたのかなって思ったんだ」

「あの、その――はい……その通りです……」

 ずばりと心を言い当てられ、ちょっと戸惑いながらも頷き、あたしはまた小声で「ごめんなさい」と呟いた。
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