初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
「謝ることなんてないよ。――どんなことを聞こうとしてくれていたの?」

 前を向いて運転しながら、一瞬だけ視線をこっちにくれるシンさん。

「え、と……その……」

 こうして2人っきりでいること自体、完璧にルールを破っているから、いまさら気にするなんておかしいとは思っているけれど。

 でも、ルールを気にするというより、シンさんに対する遠慮……のほうが大きいかも。

「でも……本当にプライベートなことですから……聞いちゃうのも悪い気がして」

 こうして会うのは今回限りなんだと思う。

 だから色々と話して知りたい気持ちもあるけれど、知ってしまえば辛くなってしまいそうな気持ちもあって――複雑。

 シンさんのことを知りたい――でも、知ってしまうと自分の中でシンさんが大きくなってしまって……普通じゃいられなくなるような気がする。

 そうなったら、あたし……この気持ちで苦しくなるかもしれない。

 それが怖かった。

 次、という希望がないなら、いっそ知らないままでもいいのかな? なんて。

 自分の中で勝手にそんなことまで考えて決め付けていて。

「うーん……」

 考えるように呟くシンさんの声が聞こえたあと、打って変わったような声が車内に続いた。

「じゃあ、こうしよっか?」
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