初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
 やっぱりこんな高級そうな場所にいると――場違い感は拭えない。

 でも、シンさんが「大丈夫」って言ってくれたら、本当に大丈夫な気になってくるから不思議。

 調度品でこの席が隔離されてるように区切られているから、人目も気にならない。

 そのことも、多少の安堵感が得られる理由のひとつかもしれない。

「ここの料理は本当に美味しいんだ。さつきちゃんにも気に入ってもらえると嬉しいな」

 けれど1番大きいのは、あたしの向かいでシンさんが本当に嬉しそうに微笑んでくれているから――だと、思う。

「――はい、ありがとうございます」

 完全に気持ちは拭いきれないけれど――でも、素直に微笑んで頷けた。

「うん、やっぱりさつきちゃんは笑ってくれている方がいい」

 そしてシンさんはあたしの笑顔を見て嬉しそうに目を細めると、

「今日は、もっともっとその笑顔を見せてくれるかな? ――ぼくだけのために」

 そんなことを言われたら、あたしの胸は早鐘で暴れる。

 恥ずかしい――けど……

 そう言われて、胸の奥がふわりと温かくなって甘くなるようで。

 この気持ち……はじめて、かも……
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