初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
「さくらちゃん目当てで来るお客、多くなったよね」

 カウンターに入ると、両サイドのポニーテールが可愛くてお店でも人気のある、メイド仲間の「あいちゃん」がこっそりと囁いてきた。

 小さなお店だから、メイドの子達も多くはないし、みんな仲が良い。

「やだぁ、そんなことないよ。あいちゃんのほうが可愛いし人気だもん」

 ソースとアイスを取り出しながら、あたしは首を横に振る。

「お気に入りのお客さんとかいる?」

 その言葉に、あたしは思わず宙に視線を向けて考えた。

「うーん……」

 別に偏見は無いけど……お客さんの中には、にやにやとスケベそうな顔をしながら、落としものを拾うフリをしてスカートの中を覗き込もうとする人も実際いたから……

 正直……常連さんも含めて、お気に入りは、ちょっと……かな?

 ――なんて、言えないけど。

「今は生活することで一杯だから、そんな余裕ないよー」

 さらりと笑ってはぐらかしつつ、パフェを作りだす。

「……」

 でも。

 あたしの脳裏には、この間の記憶が過ぎった。

 温かい笑顔が印象的だった、あの人……シンさん――だったっけ。

 ここに来る人たちとは違う感じがしたから……あの人なら、ちょっと思っちゃったり……なんて?
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