初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
『いい? 私たちにもし何かがあったとしても、私の家とは決して関わってはいけないわ……それだけは、何があっても守ってほしいの』
――生前、母は何度もあたしにそう言って聞かせていた。
『さつきから見ればおじいさんに当たる人――あの人は、自分の娘を道具としてしか見られなかった人よ。……もし何があっても、あの人を頼ることだけは、しないで欲しいの。さつきの幸せを奪われることだけはしたくない……』
母は、自分の父親のことをとても悲しんでいたっけ。
時々「可哀想な人だった」と、呟いていたことがある。
そう言い聞かせてくれたはずなのに。
気がついたときには、あたしは祖父の家へと連れられていた。
連れられた家は豪邸と呼ぶにふさわしい大きな純和風のお屋敷。
今まで3人で小さなアパートに住んでいたからか、こんな「豪邸」と呼ばれるものがこの世にあったんだ、って思ったぐらい、そのスケールは圧倒的で。
その雰囲気にのまれ、初めて出会った祖父と呼ばれるその人から「今からここに住め」という言葉に逆らうという思考が出なかった。
……とは言っても、あの豪邸にいたのは、わずかに2日。
短く切りそろえられた白髪の多く混じった髪、しわの深いその顔に優しい微笑みは微塵もなく、終始あたしを睨み続けている。
「お前は自分の母親の代わりだ。……あの男の血を引いているとはいえ、お前もこの矢代家の血を引いているに変わり無いからな。あいつが出来なかった神條家との政略結婚をお前にしてもらうから、そのつもりでここにいろ」
初対面の肉親から言われたセリフはあまりにも衝撃的で、そこでようやくあたしは母親が言っていた言葉の重みを知ることになった。
そして、あたしはこのときに祖父が政略結婚させたがっているという男の名前を聞く。
――生前、母は何度もあたしにそう言って聞かせていた。
『さつきから見ればおじいさんに当たる人――あの人は、自分の娘を道具としてしか見られなかった人よ。……もし何があっても、あの人を頼ることだけは、しないで欲しいの。さつきの幸せを奪われることだけはしたくない……』
母は、自分の父親のことをとても悲しんでいたっけ。
時々「可哀想な人だった」と、呟いていたことがある。
そう言い聞かせてくれたはずなのに。
気がついたときには、あたしは祖父の家へと連れられていた。
連れられた家は豪邸と呼ぶにふさわしい大きな純和風のお屋敷。
今まで3人で小さなアパートに住んでいたからか、こんな「豪邸」と呼ばれるものがこの世にあったんだ、って思ったぐらい、そのスケールは圧倒的で。
その雰囲気にのまれ、初めて出会った祖父と呼ばれるその人から「今からここに住め」という言葉に逆らうという思考が出なかった。
……とは言っても、あの豪邸にいたのは、わずかに2日。
短く切りそろえられた白髪の多く混じった髪、しわの深いその顔に優しい微笑みは微塵もなく、終始あたしを睨み続けている。
「お前は自分の母親の代わりだ。……あの男の血を引いているとはいえ、お前もこの矢代家の血を引いているに変わり無いからな。あいつが出来なかった神條家との政略結婚をお前にしてもらうから、そのつもりでここにいろ」
初対面の肉親から言われたセリフはあまりにも衝撃的で、そこでようやくあたしは母親が言っていた言葉の重みを知ることになった。
そして、あたしはこのときに祖父が政略結婚させたがっているという男の名前を聞く。