初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
「お前、少し前にも客に付きまとわれかけて、怖い思いをしただろ?」

「でも――前のとこれは違うよ……」

「違わねぇよ。ルール違反をする客は、みんな一緒だ」

 怒ったタクミの顔があたしを睨むように見つめてきた。

「タクミ……今日の人はあのときのお客さんとは違う人だし、それに――」

 なんであたしは必死に言い訳をしているんだろう。

 あたしはシンさんの何を知ってるっていうの?

 お店に2回来ただけの、ただのお客さん。

 今までのお客さんとは少し違う、って思っているけど、ひょっとしたら他のお客さんと一緒、っていう可能性だってあるのに。

 でも――……

 あの笑顔は嘘じゃない気がする。

 明るくて温かくて、素直で朗らかな笑顔。

 あんな笑顔が出来る人に、裏の気持ちなんてない――と、思う。

「だから……そんなに怒らないでよ――」

 ざわざわと人が行き交う、にぎやかな通りの片隅で、あたしは懸命にタクミにそう言って、まっすぐ見つめる。

「……まったく……」

 すると、ぼそり、と呟いたタクミが、ふぅ――と息を大きく吐き出し、険しい表情をやめた。

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