初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
神條慎(しんじょう しん)――それがあたしの政略結婚の相手、らしい。
矢代グループと神條財閥は、同じ旧華族の出身ということもあって、昔から仲がいい、とのこと。
お互いの家に、年の近い子供が生まれたら結婚をして、お互いの結束をより強いものにしよう、と約束したのが、祖父よりも前の代の話。
その約束は随分と昔に果たされ、家系図を辿れば縁戚関係はあるらしい。
けれど、お互いのグループも大きくなったり、実際に結婚したご先祖様たちの間に結局子供が生まれなかったこともあって、また再びお互いの家の縁を強くしようということで、母が生まれたときに政略結婚の取り決めがお互いの家で行われた、って聞かされた。
母親は、自分が家のための道具として使われるのが嫌で、逃げるようにして外国に留学し、その先で父と出会って駆け落ち――そしてあたしが生まれ、この矢代の家とは縁を切ったって言っていたみたい。
「お前は母親の不義理を償う意味でも神條の後継者と結婚するんだ。いいか、これは頼みではない、決定事項だ」
会ってすぐに祖父という肉親から言われた突き放されたような言葉。
顔やどんな人か知らないし、ましてや好きでもないのに――結婚。
それに、あたしの気持ちなんて何も考えられないなんて。
「そんなの……冗談じゃないわ……」
母さんが言っていたことは、こういうことだったのね。
あたしの幸せが奪われる――……
本当に道具としてしか考えられていない。
だから母さんも父さんと駆け落ちなんてことをしたんだ。
なんだか、あたしの中で色んなものが納得できた瞬間だったように思う。
矢代グループと神條財閥は、同じ旧華族の出身ということもあって、昔から仲がいい、とのこと。
お互いの家に、年の近い子供が生まれたら結婚をして、お互いの結束をより強いものにしよう、と約束したのが、祖父よりも前の代の話。
その約束は随分と昔に果たされ、家系図を辿れば縁戚関係はあるらしい。
けれど、お互いのグループも大きくなったり、実際に結婚したご先祖様たちの間に結局子供が生まれなかったこともあって、また再びお互いの家の縁を強くしようということで、母が生まれたときに政略結婚の取り決めがお互いの家で行われた、って聞かされた。
母親は、自分が家のための道具として使われるのが嫌で、逃げるようにして外国に留学し、その先で父と出会って駆け落ち――そしてあたしが生まれ、この矢代の家とは縁を切ったって言っていたみたい。
「お前は母親の不義理を償う意味でも神條の後継者と結婚するんだ。いいか、これは頼みではない、決定事項だ」
会ってすぐに祖父という肉親から言われた突き放されたような言葉。
顔やどんな人か知らないし、ましてや好きでもないのに――結婚。
それに、あたしの気持ちなんて何も考えられないなんて。
「そんなの……冗談じゃないわ……」
母さんが言っていたことは、こういうことだったのね。
あたしの幸せが奪われる――……
本当に道具としてしか考えられていない。
だから母さんも父さんと駆け落ちなんてことをしたんだ。
なんだか、あたしの中で色んなものが納得できた瞬間だったように思う。