初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
色々と考えたけど。
どう考えても政略結婚だなんて嫌だし、あたしのことを何も考えない祖父とも一緒にいたくない。
連れられてきた次の日、あたしは屋敷を出ることを決め、持ってきていたお財布と携帯を握り締めて堂々と玄関から出て行こうとしたら、祖父がさっきの言葉を投げかけてきたわけで。
売り言葉に買い言葉――ってつもりじゃなかったけど、捨て台詞を置き、あたしはムカムカした気持ちであの屋敷を出て行った。
最初こそムカムカした気持ちでいたはずなのに。
「……」
あの屋敷を出て1時間もすると、気持ちが落ち着いてきたのか、言いようのない気持ちに支配されていく。
空しくなった胸で思い出すのは、両親との楽しかった日々ばかり。
誕生日はもちろん、入学式や卒業式の行事ごとに家族3人でお祝いした、ささやかだけどとびきり幸せだったこと。
父も母もあまり怒らなかったけれど、それでも数少ない怒られた思い出さえ、あたしには大切な思い出になった。
決して裕福じゃなかった……でも、それ以上の「幸せ」が毎日溢れていた、あの日々。
いきなりなくなった虚無感は、計り知れない。
「……そこまで仲良くしなくていいじゃない……」
気持ちを紛らわすように呟いたあたしの言葉は、誰が聞くわけでもなく、まだほんの少し肌寒さが残る空へ、静かに消えていった。
どう考えても政略結婚だなんて嫌だし、あたしのことを何も考えない祖父とも一緒にいたくない。
連れられてきた次の日、あたしは屋敷を出ることを決め、持ってきていたお財布と携帯を握り締めて堂々と玄関から出て行こうとしたら、祖父がさっきの言葉を投げかけてきたわけで。
売り言葉に買い言葉――ってつもりじゃなかったけど、捨て台詞を置き、あたしはムカムカした気持ちであの屋敷を出て行った。
最初こそムカムカした気持ちでいたはずなのに。
「……」
あの屋敷を出て1時間もすると、気持ちが落ち着いてきたのか、言いようのない気持ちに支配されていく。
空しくなった胸で思い出すのは、両親との楽しかった日々ばかり。
誕生日はもちろん、入学式や卒業式の行事ごとに家族3人でお祝いした、ささやかだけどとびきり幸せだったこと。
父も母もあまり怒らなかったけれど、それでも数少ない怒られた思い出さえ、あたしには大切な思い出になった。
決して裕福じゃなかった……でも、それ以上の「幸せ」が毎日溢れていた、あの日々。
いきなりなくなった虚無感は、計り知れない。
「……そこまで仲良くしなくていいじゃない……」
気持ちを紛らわすように呟いたあたしの言葉は、誰が聞くわけでもなく、まだほんの少し肌寒さが残る空へ、静かに消えていった。