初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
「そんな言い方すると、まるで恋人のことをすっごく自慢してるみたいね」

「えっ……」

 マコに「恋人みたい」って言われて、さらに硬直するあたしの頭。

「そ、そそそっ、そんなっ……こ、恋人っ?」

「違う? だって、すっごくべた褒めじゃない」

 ……確かに、言われてみれば。

 さっきのシンさんのことは「恋人自慢」って言われたら、そう思われても仕方ない言い方をしたかもしれない。

「そんな……」

 どう言っていいのか分からなくて、あたしは顔を赤くし、俯く。

「そういうつもりじゃなかったの――」

 恋人、って言葉が、あたしの中に小さな一石を投じる。

 それは波紋となってゆっくりと心の中に揺らめき、広がっていく。

 あたし――シンさんのこと……どう思っているのかな……?

 名前以外は何も知らない。

 年齢も、誕生日も、血液型すらも、分からない。

 ビジネスマンなのかなって思うくらいで、具体的にどんな会社で働いているのか、どこで住んでいて、どんな暮らしをしているか――

 そんなことは知らないし、知っちゃいけなかったから。
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