えがお~最後に残した言葉~
僕は琳の
手を握って寝た。
朝起きると、琳は
ベッドの上に座っていた。
「り、ん…?」
その姿が悲しそうで
声をかけるのを躊躇った。
「ん、柚希
おはよう……
起こしちゃった?」
いや、そう言い
僕は椅子に座り直す。
ソファーで
寝ていたから首が凝った。
コキコキと
首をならすと琳が
「柚希…」
そう呼ぶから
琳の方に向き直した。
「琳はね、柚希が…
大好きだから。
それだけは知ってて」
何言ってるんだよ
言おうとしたのに…
琳が悲しそうに
目を伏せるから、
僕は何も
言わずにただ頷いた。
今日の
琳は静かだった。
いつもの
琳じゃないみたいだった。
ずっと窓の外を見て
苦虫を噛んだような
顔をしていた。
前にも三回ほど
みたことがある。
琳がそんな顔を
するときは大抵
泣くのを我慢しているとき。
握っている手を離したら
琳がどこかへ行きそうで…
ギュッと
琳の手を握りしめた。
そしたら
琳は弱く笑った。
何だか琳が
“どこにも行かないよ”
って言っているように
みえて、安心した。