嘘と苺とショートケーキ 【短編】
『(~~~っ…)』
隣には、呉暁がいる。
たったそれだけなのに、心臓が張り裂けそうにバクバクと震えていた。
今までのあたし、よくこんな席に座ってたよ…。
なんて、呉暁を全く意識してなかったからなんだけど。
…よし、言うぞ!
『………あ…あのっ!』
「オレ、気にしてないから」
『……えっ?』
遮られた言葉。
投げ掛けられた言葉。
気にしてないって……キスのこと?
「倉眞さんは傷心してて、寂しかったんだろ?大丈夫だって、なかったことにするから。責任とか、別に感じなくて良いし」
あたしの方を向いて、呉暁は笑った。
……どこか冷めた目をしたまま。
『(…なにそれ……なにそれなにそれなにそれ!?)』
返答することなく俯いたあたしを見て、呉暁は肯定と取ったんだろう。
前に向き直して、再び参考書を解き始めた。
……呼び出した後のことは何度もシミュレーションしてたのに。
そんな考えは、一瞬にして吹き飛んだ。