嘘と苺とショートケーキ 【短編】
―ギィッ…
何度も聞いた、錆び付いた扉の音。
風が頬を掠めたと思った瞬間、抱き締められていた。
『っ!?な、なにいきなり!?』
「………倉眞さんが邑瀬のとこに来てたの、今朝見たんだ」
腕の力が緩まって、呉暁の頭がずるりとあたしの肩に凭れ掛かった。
適度な重みが、何故か心地好い。
『…へ?あ、ああ…冬薙さんの報告の…』
「………そんなの、オレわかんねぇじゃん」
弱々しい声音に、あたしは首を傾げた。
『どういう意…』
「だから!邑瀬と倉眞さんが付き合ってるんだと思ったんだよ!」
肩を掴まれて、べりっと身体を離された。
驚いて目を丸くするあたしを余所に、呉暁は口元を手で隠しもごもごと口籠った。
…顔は、真っ赤だった。
ねぇ、それって……都合良く解釈しても良いの…?