悪い女
「根岸、やらしー」
先生はクッと笑ってあたしを見つめる。
だから、やめてほしい。その無差別に色気のある目。
「進路指導終わり。根岸は興味薄そーだからいーわ」
教師がそんなんでいいのか、とにかく先生はあたしの成績やら志望校やらが書かれたファイルを閉じた。
「…いいんですか?」
正直、進路がどうとかの話位面倒くさいものはないから助かるけど。
「第一志望、根岸が選んだんだろ?」
先生は薄く笑って聞く。その笑い方が独特で目を惹かれる。
あたしが頷いたのを確認してから先生は
「別にしたい事がないならないでいい。今見つける必要はねーし。それより数ある大学の中から『おまえ』がここを選んだってとこが重要。」
先生はあたしから目を逸らさないまま片方の眉だけ上げる。
「別に、大した理由はないですよ。ここが無難だから、それだけです」
あたしはそんな力強い瞳を真っ向から否定したくなる。