悪い女
廉に出会ったのは丁度一年前、高2の夏。
出会ったって言っても廉の名前は有名だから知ってた。ここらへん一帯を占める不良のアタマだとか、常に女をとっかえひっかえだとか、廉に逆らえばこの街では生きていけない、とか。廉を取り巻く常識外れな噂は絶えなくて、学校生活に興味が薄かったあたしでさえその存在を知ってた。
地味なあたしが派手な廉と関わる筈がなく、顔を確認したのはその夏が初めてだけど。
『茜ちゃんっていうんだ?俺と付き合わない?』
軽い口調。女ウケが良さそうな綺麗過ぎる容姿。
柄の悪い他校の生徒に絡まれたあたしをまるで漫画みたいに助けた男はあたしの名前を聞いた後、さっくりそう言った。
『無理』
何言ってんだこいつ。あたしの即答の返事に心底キョトンとした顔をして、
『じゃ、エッチしよーよ』
このエロ男はすぐに、綺麗な笑顔を向けた。