悪い女

あたしは廉が本当はどんな奴か知らなかったし、名前すら偶然知った。

関わる筈が無かった不運はもう始まった後。



『だって、茜ちゃん聞かないから』



聞く必要があるとは思わなかったし。


毎日毎日飽きもせず放課後あたしを迎えにくる廉。

そのお陰なのか、女子の嫉妬を一心に受けて立場のないあたし。



だから、珍しく、廉が顔を出さなかった日、あたしは心底嬉しかったのに。



『根岸さん?廉、あたしの彼氏だからチョッカイかけないでもらえる?』


もっと言い方はひどかったかもしれないけど、あたしの目の前に現れたのは廉の横に並ぶのが当たり前のような派手で華美な女子達。

正直、面倒くさかった。ここで『廉』の名前を知る事になって、



『あなたの彼氏?じゃあ縄にでも繋いでたら?あたしはいらないからしっかり見張ってなさいよ』



平坦な口調で言った言葉に、彼女達の目が一層険しくなってあたしは溜め息を一つだけ零した。



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