月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「なにしてんの、冬海くん。こんな……所で」

「なにしてんの、センパイこそそんなに走って」


 3階から冬海が見えたから、とは言えないので黙っていたら「じゃあ俺、帰るから」と言われる。
 

「あ、うん。ごめんね」

「ううん」

 鞄を持つ手を肩に乗っけて、歩き出そうとする背中が止まる。そして振り向く。

「あ、センパイさ」

 え? と顔を上げると目が合って、胸が高鳴った。

 冬海はじっと見つめたまま、黙っている。何、何を言うの?


 見つめられて、あたしは動けなくなった。


「泣く時は1人じゃないほうがいいかも。女の子は」

「あ……」



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