月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「冬海くんに、電話していい?」

「いいよ、俺で良ければ」



 その会話がループして、1人で赤面している。もう、なんなの。自分で言っておいて、自分で恥ずかしくなってる。


 ドキドキしてる。なんでこんな風になったんだろう。何なんだろう。

 あの綺麗な顔で言われたら、どんな言葉だって、どんな人だってドキドキするに決まってる。

 あたしだけじゃない。……あたしにだけじゃない。


 あたしは、自分で自分の気持ちを持て余している。


 黒板に書かれた文字を、ノートに何度も写し間違えて、書いて消してを繰り返していたら「紫」という漢字にゲシュタルト崩壊を起こしてしまった。


 もうイヤ。


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