月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 はぁ。冬海はモテるんだろう。そんなの分かるよこの美少年。 磨かれたカンは、女の子をイヤな気持ちにさせる事無く、そして嫌いな子じゃなければ自分の方に引き寄せる。
 
「……いつもそうなの?」

「なにが?」

 返事を待ってるんだけどな? みたいな表情で、冬海は顔を上げた。

 自分に魅力があるのを知ってる顔。それくらいはあたしにも分かる。女の子にもこういう子いる。自分が可愛い、魅力的だって分かってる人。

 あたしはその顔を正面から見られなくて、視線を逸らした。

「この子、俺のこと好きなんだろなって気付いたら、そうやって言うの?」

「だって」

 すぐ隣から聞こえる冬海の声は、心地よい。

「……俺もちょっと、センパイに興味……」

 小さい声だ。

 え、何それ。もう一回言ってちょっと今の。

「きょ、きょうみ」

「だ、だから、知りたいなって。……イヤ?」

 だからその子犬みたいな聞き方やめて。

「センパイって俺のこと好きかもって、思ったから、だったら俺から聞こうと思って」

「す、好きかもって、その予想がハズレだったらどうすんの」

 バクチ告白じゃないか、イタリア人なの? 好感触だから誘ってみようぜフゥ~みたいな感じじゃないか。

「ハズレなの? ダメなの?」

 だからー!

「俺のこと、好きじゃないの?」

 おへその辺りが、カッと熱くなった。

「す、好きじゃない、じゃなくて」

「んじゃ、なんなの?」

「……」
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