月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 コンビニに出入りする人達、こっちを見る人も居れば、見ない人も居る。でもあたしには、前を通る人達みんな、あたし達の会話が全部聞こえているんじゃないかと思える。恥ずかしすぎる。

「泣く時、電話していいかーとか言ってたじゃん」

 ぎゃあ、そんな事をいま言わないで。言って後悔してる言葉の歴代1位ね、いま現在。

「……うん……たぶん」

「え、なんだよたぶんって」

「だって、なんか体が勝手に」

「ああ、そんくらい好きってことね。俺が」

「は?」

「いいのいいの。分かったから」

 なんか……キャラ変えたの? あたしは冬海の顔をじーっと見つめた。ちょっと目線は逸らしてたけど、じっと見るというか、ほっぺたあたりを見ていたっていうか。瞳をずっと見ていたわけじゃない。そんな事は恥ずかしくてムリ。

「なんつーか、なんていうの? カン? 俺のこと好きなんだろうなって。こういうのって、分かるじゃん?」

「は、分かんないでしょ……普通」

「分かるでしょ」

 なぁ、と傾げた首をへし折りたいくらい可愛かったので、鼻の毛穴が全開になりそう。

「なにそれ……うぬぼれヒドイ」

 あたしは思ったことを言ったんだけど、冬海は静かにニコニコしてるだけで、あたしはじっと見られてるし、見つめ返してやろうとしたけど視線がぶつかると脳みそ破裂しそうだったので、途中でお手上げだった。

「ね、だめなの?」

 だめ、なわけない。

「だ」

「だ?」

 だめなわけないでしょう。

「だめじゃない……うぅ」

「わ! センパイ泣かせたー! ごめん!」

 ほら忘れてた。ここはコンビニの前だった。そんな声出すからみんな見てるじゃないの。
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