月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「来週の日曜、お父さんと出かけるね。夜なんだけど」

 洗い物をしていたお母さんが言った。両親はたまに二人で出かける。デートだ。仲良しで良いことだと思う。

「そ、分かった」

 カレーが無くなるまでスプーンあと5杯分くらい。

「ご飯、冷蔵庫に入れておくから」

「自分でも作れるよ」 

「足りなかったら何か作って食べて。光は部活かもしんないけど」

「はーい」

 そういえば光は……と思ったけど、光のマグカップがテーブルに置いてあったのでどうやら帰ってきてると分かった。なんか、ちょっと悩んでる感じだったけど。なかなか二人で話すなんて事も無いもんな。恋愛で悩んでるっぽかったけど。

「お父さん、コンサートのチケット取ったらしくて」

 お母さんは喋り続けていた。半分くらい聞いていなかった。

 日曜。あたしは何をしてるだろう? 冬海に誘われたりしないだろうか。しない? どうかな。今日は何も言われなかったけど。気が早いかな、やだもうカレーの味分からなくなってきた。

 完食! モヤモヤ考えてるうちに食べ終わった。「ごちそうさま!」それと同時に皿を重ねてシンクへ片付ける。洗い物の途中の邪魔をしないように置き、部屋へ急いで戻ろうと思った。


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