月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

3-1 ジョンキル


「遊んでるって聞いたけど、いいの? アキラ」

 友達がそう言ってたけど、どうでも良かった。あたしはその時の彼氏、友哉が大好きだった。

 中学3年の夏。初めての彼。ほとんど初恋みたいなものだった。触れあって嬉しいとかドキドキするとか、小学生や幼稚園のおままごとみたいなのとは違った。人を好きになる、それを友哉は教えてくれた。

 どっぷり浸かり、まんまと騙されていたというか。

 それと「全てだ」と思いこんでいたものを無くす辛さと悲しさも教えてくれたけど。

「晃、今晩うち来る?」

「えー? 親は……」

 友哉だけしか見えて無くて、長い髪をサラサラさせてるのが好きだって言われたから、結ぶのをやめた。

「うち母ちゃんしか居ないし、母ちゃん夜に働きに行ってるし」

 そうなんだ、知らなかった。でも、少しずつ友哉の事を知ることができて嬉しかった。


 ちょっと不良な雰囲気で、背が高くカッコイイ友哉。

 同じクラスで、前後の席になったからよく喋るようになった。あたしが前、友哉が後ろ。

 あたしはクラスで目立つ感じのキラキラ女子じゃなかったから、友哉が話しかけてくれるととても嬉しかった。友哉があたしのノートを写したがるようになったり、分からない問題を聞いてきたり。自然と、一緒に居る時間が長くなる。そしてある日、言われた。「一緒に居ねぇか?」って。そこからあたし達は今まで以上に一緒に過ごすようになった。

「なに、お前ら……つきあってんの?」

 クラスメイトは、まぁ要するにビックリしてたけど、あたしも一応そういうつきあったりとか? なんつーの? したいじゃん。
< 135 / 394 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop