月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 別れ、それを告げた時。友哉は表情をあまり変えず、でも目つきは鋭くなって。
 学校、人気の無い影のほう。二人で立っている。放課後だから人は来ないだろう。部活動をする生徒の声が聞こえる。

 すぅっと友哉は息を吸い、そして言葉を出す。何を言うの。

「逃げんのか、離れんのか、俺から」

 何を言うの、今さら。離れるとか言わないで。あたしを騙したくせに。

 すがるようなタイプじゃない。分かってる。そういうんじゃない。逃がすか、なんの文句があるんだよ。そう言ってるように感じた。友哉の指があたしの腕を掴む。めり込み、肉を突き破るんじゃないかと思うくらいに強く。

 騙すなら最後まで騙していて欲しかった。なんて、都合の良い頭かな。

「……ごめん」

 そう言って、全力で振り払うしか無かった。背を向けて歩き出す。

「……浮気したんじゃ、ねぇよ」

 友哉の声が背中に刺さる。それからあたしは逃げるように。

「お前が浮気なんだよ!」

 いまそこで知る事実は、全ての終わりを意味した。

 笑っちゃう。なにが「これがあたしの全て」だよ。バカじゃないの。大笑いだ。

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