月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「ちょっと、聞いてんのセンパイ」
冬海の声にハッとして、顔を上げた。冬海は目を細めて見下ろし、からかうような顔。
「ぼーっとしてんじゃないよ」
「あ、ごめん。ちょっと……」
見下ろすっていうか、あたしと身長ちょっとしか変わらないくせに。そしてなんか大人ぶってるし。でも、実際あたしより数段大人びている。
「まぁいいや、週末なんかどっか出かけたくない? 天気大丈夫そうだし」
梅雨入りが発表されていた。今日は雨は降らなかったけど、昨日はけっこう降っていた。
「なんで週末の天気が大丈夫だって分かるの?」
「カン」
「意味わかんない」
「センパイよりカン鋭いので、俺」
なんかよく分からない事を言っているけど、週間予報だろうか。日曜日にどこかに誘われていたのかもしれない。全然聞いてなかったけど。冬海と居るのに、友哉の事を思い出してしまうなんて。
学校帰りに、駅の近くの公園というか空地みたいなところで二人で座って話している。
どこか店にでも入れば良いんだろうけど、なんか人目を避けたくて。コンビニでペットボトルを買い、壊れたブロックみたいなものの上に座って。まわりは砂利。どんよりとした天気で、夕方の時間だけどなんかはっきりしない感じで。