月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
昼近くに目が覚めて、一瞬、今日が学校の日なのか休みなのか分からなかった。目覚めた瞬間に時計が目に入って、時間を知った。なんだか眠りすぎてしまったようで、体を起こすのが億劫。ああ、今日は日曜日だった。
やっと体を起こすと、カーテンの隙間から光。昨夜は何をして眠りについたっけ。
「晃ー? 起きてるの?」
パタパタと階段を上がってくる音と、そのあとにお母さんの声。
「あー、うん。いま起きた」
「珍しいわねぇこんな時間まで寝てるなんて」
「いま下に行くよ」
今度は階段を下りる音。お母さんが1階に行ったんだ。あたしは、部屋着のままでノロノロと部屋のドアを開け、階段を下りる。
「お腹空いてたら、冷蔵庫に朝ご飯あるから。あと光は部活ね」
「はぁい。どしたの、急いでるけど」
眼球が腐るぐらい寝たような気がするけど、あくびが出た。段々と覚醒してくる頭。キッチンの食べ物の匂いが胃を刺激した。お腹空いたかも。あーなんだろ、今日は何も予定無いや。冬海はもう起きてるだろうか。
「お母さん、今日もう出かけるからね。ほら、この間言ってたでしょ。お父さんとコンサート」
「あれ今日なの?」
その話いつ聞いたっけ。先月とかじゃない? 楽しみ過ぎてわが娘に早めに言いすぎる母親。もう忘れてたよその話。
「そうそう。お父さん今日は午前中はちょっと会社だっていうから、午後から合流するのよ」
と言いながら、まだ着替えなどはしていない様子。お化粧しておしゃれして、良いですねぇデートですか。コンサートって誰のコンサート? 聞いてなかった。ライブじゃなくてコンサートね。
「光が帰ってきたら、冷蔵庫に」
「あーはいはい、心配いらないんでゆっくりしてきてください」
「そうね、お願いしますね」
エプロンを取りながら、お母さんは自分の寝室へ入っていった。