月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 冷蔵庫を開け、ラップがかかった皿があるのを確認してから、紅茶味のパック豆乳を取り出した。
 なんか中途半端に変な時間まで過ごしてしまったなぁ。再生してた映画なんてとっくに終ってるし。あたしは再びソファに座って、テレビのチャンネルを回す。つまらない。日曜日のこんな時間に面白いテレビなんかやっていない。リモコンを放り投げる。梓に連絡してみようかなぁ。こんな、何もやることがない日には、他のみんなは何をして過ごしているんだろう。グダグダに過ごしているのは自分だけなんじゃないかと思ってしまう。

 コンビニでも行って来ようかな。チャリで数分の所にコンビニがある。別に買うもの無いけど。光は何か欲しいものあるかもしれない。あたしはプリンでも買ってこよう。光に声をかけるため、バスルームへ向かう。声かけて、あと着替えて出かけよう。

 洗濯機とかが並ぶ脱衣所に、光のジャージが脱ぎ捨ててある。中からシャワーの音。水がもったいないから、出しっぱなしで体を洗わないでってお母さんに言われてる。

「光? あたしコンビニ行ってくるから」

 浴室ドアをノックする。シャワーの音で聞こえないのかもしれない。「光?」あたしはもう1度呼んだ。返事がない。

「光ってば」

 ガンガン! けっこう強く浴室ドアを叩く。全然返事がない。なにそれシカト? とか思ってしまう。思春期だからな。お姉ちゃん大変です。

「開けるよ、光!」

 ちょっと開けて声かければさすがに分かるだろう。そう思って少し開けてみた。

「ねぇってばー……」

 うちは豪邸じゃないし、バスルームがだだっ広いわけじゃない。すぐに異常に気付いた。バスダブにもたれかかりこちらに背を向けて座ってる光が居た。ブラとパンツの下着姿。

「……光?」



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